遺言のQ&A
遺言書の作成・変更・保管・検認などについて、よくあるご質問をまとめました。
なお、2026年6月24日に、遺言の押印要件の見直しや、パソコンなどで作成したデータを法務局に保管する新しい遺言方式の創設を含む改正法が公布されました。ただし、2026年9月現在、これらの改正はまだ施行されていないため、以下は現在適用されているルールに基づいて解説します。
Q1)遺言書の内容を変更できますか?
A1)遺言者の最終意思を尊重するため、遺言者は、生前であればいつでも遺言の全部または一部を撤回・変更できます。公正証書遺言を、後から作成した自筆証書遺言で変更・撤回することも可能です。
ただし、後から作成した遺言に形式上の不備があると、変更や撤回の効力が認められないおそれがあります。重要な内容を変更する場合は、公正証書遺言で作り直すことも検討しましょう。
Q2)自筆証書遺言の作り方は?
A2)原則として、遺言者本人が遺言書の全文・日付・氏名を自書し、押印します。2026年9月現在、自筆証書遺言には現行法上の押印が必要です。
日付は、「令和8年9月1日」のように作成日を特定できる形で記載します。「○月吉日」のように日付を特定できない記載は、遺言が無効となるおそれがあります。
財産目録については、パソコンで作成したり、通帳や登記事項証明書のコピーを添付したりできます。ただし、自書によらない財産目録の各ページには、遺言者の署名・押印が必要です。両面に記載がある場合は、両面に署名・押印します。
遺言書を封筒に入れて保管することはできますが、封印は自筆証書遺言の成立要件ではありません。封印した遺言書は、相続開始後、家庭裁判所外で勝手に開封しないよう注意してください。
Q3)公正証書遺言の際、準備するものは何でしょうか?
A3)一般的には、次のものを準備します。ただし、必要書類は遺言内容によって異なるため、事前に利用する公証役場へ確認してください。
(1) 本人の実印と印鑑登録証明書(通常は発行後3か月以内)、または運転免許証・マイナンバーカードなどの顔写真付き公的身分証明書
(2) 戸籍謄本・除籍謄本など、遺言者と相続人の続柄が分かるもの
(3) 相続人以外の人へ遺贈する場合、その人の住民票など住所が分かるもの
(4) 土地・建物の登記事項証明書、固定資産評価証明書、または固定資産税納税通知書の課税明細
(5) 預貯金通帳のコピー、有価証券の取引残高報告書など
(6) 証人を自分で用意する場合、証人予定者の氏名・住所・生年月日が分かるもの
Q4)遺言書を書き損じたときは?
A4)自筆証書遺言を訂正することはできますが、加除訂正の方法は法律で厳格に定められています。
訂正方法を誤ると、変更部分の効力が認められない可能性があります。訂正箇所が多い場合や、重要な内容を変更する場合は、新たに遺言書を作り直すことをお勧めします。
Q5)遺言は誰でも作成できるのでしょうか?
A5)民法では、満15歳に達した人は遺言をすることができると定められています。そのため、15歳以上で遺言をするために必要な意思能力があれば、未成年者でも遺言できます。
成年被後見人についても、意思能力を一時的に回復しているときは遺言できる場合がありますが、現行法上、医師2人以上の立会いなどの特別な要件があります。
認知症などの診断名があるだけで直ちに遺言が無効になるわけではありません。遺言を作成した時点で、遺言内容とその結果を理解できる状態だったかが重要です。
Q6)遺言書が見つかったら、どのような手続が必要でしょうか?
A6)公正証書遺言と、法務局に保管されている自筆証書遺言を除き、遺言書の保管者または発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく家庭裁判所へ検認を申し立てる必要があります。
検認は、相続人に遺言書の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状、日付、署名、訂正の状態などを明確にし、偽造・変造を防ぐための手続です。検認を受けても、遺言書の有効・無効が判断されたことにはなりません。
封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いのもとで開封します。家庭裁判所外で開封した場合や、検認手続を怠った場合には、5万円以下の過料の対象となる可能性があります。ただし、誤って開封しただけで直ちに遺言が無効になるわけではありません。
Q7)数通の遺言書が出てきたら、どの遺言書に沿って執行すればよいのでしょうか?
A7)単純に日付が最も新しい遺言だけを見ればよいとは限りません。複数の遺言の内容が抵触する部分については、後の遺言によって前の遺言が撤回されたものと扱われます。
一方、内容が抵触しない部分については、古い遺言の効力が残ることがあります。複数の遺言書が見つかった場合は、すべての内容と作成日を確認して判断します。
Q8)パソコンで自筆証書遺言を作れますか?
A8)2026年9月現在、自筆証書遺言の本文、日付、氏名は、遺言者本人が手書きする必要があります。パソコンで作成した本文だけでは、有効な自筆証書遺言にはなりません。
ただし、2019年1月13日以降、財産目録については、パソコンで作成したり、預金通帳や登記事項証明書のコピーを添付したりすることが認められています。この場合、財産目録の各ページへの署名・押印が必要です。
2026年6月には、パソコンなどで作成した遺言データを法務局に保管する新しい遺言方式を創設する改正法が公布されましたが、現時点ではまだ利用できません。
Q9)遺言の保管はどうしたらよいでしょうか?
A9)自筆証書遺言を自宅や貸金庫などで保管する方法のほか、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法があります。
法務局の保管制度を利用すると、遺言書の紛失・改ざん・隠匿を防ぎやすくなり、相続開始後の家庭裁判所による検認も不要です。保管申請の手数料は、遺言書1通につき3,900円です。
自宅や貸金庫で保管する場合は、遺言書の存在や保管場所が相続開始後に分かるようにしておきましょう。貸金庫は契約者の死亡後、開扉するために所定の手続が必要となることがあるため、利用する金融機関への確認も必要です。
Q10)法定相続分と異なる内容の遺言がある場合、どちらが優先されますか?
A10)原則として、遺言の内容が法定相続分に優先します。
ただし、配偶者、子、直系尊属など一定の相続人には「遺留分」があります。遺留分を侵害する遺言も直ちに無効になるわけではありませんが、相続開始後、侵害を受けた相続人から受遺者などへ遺留分侵害額に相当する金銭を請求される可能性があります。
Q11)亡くなった父が公正証書遺言を残したようですが、見つかりません。探す方法はありますか?
A11)遺言者が亡くなった後、相続人や受遺者などの利害関係人は、公証役場で遺言公正証書の有無を照会できます。
遺言者の死亡を確認できる戸籍、請求者が相続人や受遺者などであることを確認できる資料、本人確認書類などが必要です。具体的な必要書類や請求方法は、公証役場へ事前に確認してください。
Q12)遺言書が偽造された疑いがある場合はどうすればよいですか?
A12)偽造の疑いがあっても、検認が必要な遺言書であれば、まず家庭裁判所で検認手続を行います。検認は遺言書の有効性を判断する手続ではありません。
遺言書の有効・無効について当事者間で解決できない場合は、調停や遺言無効確認訴訟などを検討することになります。遺言書の原本を現在の状態のまま保管し、筆跡、印影、作成時の判断能力、保管状況などの資料を確保したうえで、早めに弁護士へ相談することが重要です。
Q13)遺言書に遺言執行者の指定がない場合はどうなりますか?
A13)遺言執行者が指定されていなくても、直ちに遺言が無効になるわけではありません。
ただし、遺言内容を実現するために遺言執行者が必要な場合は、相続人や受遺者などの利害関係人が、家庭裁判所へ遺言執行者の選任を申し立てることができます。相続手続を円滑にするため、遺言書であらかじめ遺言執行者を指定しておく方法があります。
Q14)夫婦が一緒に1通の遺言書で遺言した場合、有効になりますか?
A14)2人以上の人が同じ証書で遺言をする「共同遺言」は、民法第975条で禁止されています。
夫婦が同じ内容を希望する場合でも、それぞれが別々の遺言書を作成する必要があります。内容に矛盾が生じないよう、二次相続まで考慮して作成しましょう。
Q15)相続人に対する「遺贈する」と「相続させる」の違いは何ですか?
A15)「相続させる」という記載は、一般に、相続人へ特定の財産を承継させる「特定財産承継遺言」として扱われます。「遺贈する」は、遺言によって財産を無償で譲る表現であり、相続人以外の人へ財産を渡す場合にも用いられます。
不動産登記については、2023年4月1日から、遺贈によって不動産を取得した相続人は、単独で所有権移転登記を申請できるようになりました。そのため、「遺贈する場合は必ず相続人全員との共同申請が必要」という説明は、現在は正確ではありません。
一方、相続人以外の人への遺贈では、原則として登記義務者との共同申請が必要になるなど、手続が異なります。また、登録免許税や税務上の取扱いも受取人によって異なる場合があるため、遺言書の文言は個別の事情に応じて検討する必要があります。
Q16)遺言書に記載していない財産が後から見つかった場合はどうなりますか?
A16)遺言書に記載されていない財産は、原則として相続人による遺産分割協議の対象になります。
記載漏れに備えて、「本遺言に記載のないその他一切の財産」を誰に相続させるかを定める方法があります。ただし、家族関係や財産内容によって適切な記載は異なります。
Q17)財産を渡す予定の人が、遺言者より先に亡くなった場合はどうなりますか?
A17)受取人が遺言者より先に亡くなると、その人に財産を相続させる、または遺贈する部分が効力を生じず、遺言者の希望どおりに承継されないことがあります。
このような場合に備え、「その人が先に死亡していた場合は別の人へ承継させる」という予備的な定めを設けることがあります。家族関係や財産状況が変わったときは、遺言書を定期的に見直しましょう。
Q18)公正証書遺言なら、必ず有効になりますか?
A18)公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため形式不備のリスクを大きく抑えられますが、絶対に無効にならないわけではありません。
作成時に必要な意思能力がなかった、詐欺や強迫によって作成された、内容が公序良俗に反するなどとして、有効性が争われる可能性はあります。判断能力に不安がある場合は、早めに作成し、医師の診断書や相談記録などを適切に残すことも検討します。
関連ページ:遺言の種類|公正証書遺言|遺言コンサルティングサポート
参考となる公的情報
この記事の執筆者
- ながの司法書士法人 代表社員 降籏桂
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保有資格 司法書士・行政書士・宅地建物取引士(未登録) 専門分野 相続・生前対策 経歴 松本深志高等学校・千葉大学法経学部法学科卒業
大学在学中、行政書士試験合格
大学卒業後、東京の大手司法書士法人に就職し、司法書士補助者として勤務
平成24年司法書士試験合格、平成25年千葉司法書士会にて司法書士登録
地元長野県に戻ることを決意し、平成26年ながの司法書士法人に入社
平成29年松本事務所開設に当たり、従たる事務所代表に就任
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