財産管理委任契約
財産管理委任契約とは、本人が信頼できる家族や専門家などに、預貯金の管理や各種支払い、不動産の管理など、財産に関する事務を委任する契約です。
法定後見制度は、認知症などにより判断能力が不十分になった場合に利用する制度です。また、任意後見制度は、あらかじめ契約を締結していても、本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて効力が生じます。
一方、財産管理委任契約は、本人に契約締結に必要な判断能力があれば、家庭裁判所の関与を必要とせず、当事者間の合意により財産管理を依頼することができます。
例えば、高齢や病気などで外出が難しくなり、銀行での手続きや公共料金の支払いを家族などに任せたい場合に、活用が考えられます。
財産管理委任契約の特徴
財産管理委任契約には、主に以下の特徴があります。
●当事者間の合意によって契約を締結できる
家庭裁判所への申立てを必要とせず、本人と委任を受ける人との合意によって契約できます。
●開始時期や委任する事務の内容を決められる
預貯金の管理や費用の支払いなど、委任する事務の範囲や開始時期を当事者間で定めることができます。ただし、実際に代理人として手続きできる範囲は、契約内容や法律、金融機関等の取扱いによって制限される場合があります。
●任意後見契約と組み合わせることができる
判断能力が十分なうちは財産管理委任契約を利用し、将来、判断能力が不十分になった場合は任意後見制度に移行する方法もあります。
財産管理委任契約のメリット
・判断能力が不十分とはいえない場合でも利用できる
・開始時期や内容を自由に決められる
・本人の判断能力が低下しても、原則として契約が当然に終了するわけではない
ただし、本人の判断能力が低下した後も財産管理委任契約を継続する場合は、本人の利益を適切に保護できるか慎重な検討が必要です。必要に応じて、成年後見制度の利用を検討します。
財産管理委任契約のデメリット
・任意後見契約と異なり、後見登記によって代理権が公示される仕組みがない
財産管理委任契約は公正証書で作成することもできますが、任意後見制度のような後見登記は行われません。そのため、金融機関などで手続きを行う際には、契約書や委任状などによる権限の確認が必要になる場合があります。
・任意後見制度における任意後見監督人のような公的監督者がいないため、委任された人をチェックすることが難しい
・成年後見制度のような取消権はない
以上のことをしっかりとおさえたうえで、財産管理委任契約を導入するか検討しましょう。
財産管理委任契約で依頼できること
財産管理委任契約では、本人の希望や生活状況に応じて、財産管理に関するさまざまな事務を依頼することができます。
具体的には、以下のような事務が考えられます。
預貯金の管理や支払い
・預貯金の残高や入出金の確認
・生活費、公共料金、医療費などの支払い
・金融機関での各種手続き
不動産に関する管理
・所有する不動産の管理
・賃貸物件の賃料の受領や管理
・不動産に関する契約手続き
その他の財産管理
・年金などの収入の確認
・税金や保険料などの支払い
・本人の生活に必要な契約手続き
ただし、実際に代理人として行える行為は、契約で定めた権限の範囲に限られます。また、金融機関や契約の相手方によっては、所定の委任状や本人確認書類などが別途必要になる場合があります。
特に、不動産の売却など本人の財産に大きな影響を与える行為については、代理権の内容を明確にしておく必要があります。
財産管理委任契約と任意後見契約・死後事務委任契約の違い
財産管理委任契約と任意後見契約、死後事務委任契約は、それぞれ目的や利用する時期が異なります。
| 項目 | 主な目的・特徴 |
|---|---|
| 財産管理委任契約 | 本人の判断能力が十分な段階から、財産管理を他の人に任せるための契約です。 |
| 任意後見契約 | 将来、判断能力が不十分になった場合に備える制度です。家庭裁判所による任意後見監督人の選任後に効力が生じます。 |
| 死後事務委任契約 | 本人が亡くなった後の葬儀や納骨、各種契約の解約など、一定の事務を委任するための契約です。 |
任意後見契約と組み合わせる方法(移行型)
財産管理委任契約と任意後見契約を組み合わせる方法は、一般的に「移行型」と呼ばれています。
本人の判断能力が十分なうちは財産管理委任契約によって支援を受け、判断能力が不十分になって任意後見監督人が選任された後は、任意後見契約による支援へ移行する仕組みです。
この場合、いつ財産管理委任契約を終了させるかなど、契約内容を適切に定めることが重要です。
詳しくは、日本公証人連合会「財産管理等委任契約と任意後見契約の組み合わせ」をご確認ください。
この記事の執筆者
- ながの司法書士法人 代表社員 降籏桂
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保有資格 司法書士・行政書士・宅地建物取引士(未登録) 専門分野 相続・生前対策 経歴 松本深志高等学校・千葉大学法経学部法学科卒業
大学在学中、行政書士試験合格
大学卒業後、東京の大手司法書士法人に就職し、司法書士補助者として勤務
平成24年司法書士試験合格、平成25年千葉司法書士会にて司法書士登録
地元長野県に戻ることを決意し、平成26年ながの司法書士法人に入社
平成29年松本事務所開設に当たり、従たる事務所代表に就任
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