公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言者の意思に基づき、公証人が作成し、その原本を公証人が保管する遺言です。公証人が作成に関与するため、形式不備によって遺言が無効になるリスクを抑えられ、原本の紛失・改ざん・隠匿も防ぎやすい方法です。
作成の際には、2名以上の証人の立会いが必要です。
公証人は、遺言者の意思を確認して公正証書を作成し、遺言者と証人に読み聞かせ、または閲覧させて、内容が正確であることを確認します。2025年10月1日から公正証書作成手続がデジタル化され、原本は原則として電磁的記録で作成・保存されています。
公正証書遺言は家庭裁判所による検認が不要なため、相続開始後、遺言内容を実現するための手続に着手しやすいことも特徴です。ただし、公正証書遺言であっても、作成時の意思能力などを理由に有効性が争われる可能性を完全になくせるわけではありません。
目次
公正証書遺言の作成手順
(1)誰に、どの財産を、どれだけ相続させるのかあらかじめ決める
①財産の洗い出し
まずは、遺言者自身の財産を洗い出します。
主な財産には、不動産、預貯金、株式・投資信託、生命保険、事業用資産、自動車、貴金属などがあります。借入金や保証債務などの負債も確認しておきましょう。
特に預貯金については、通帳やインターネットバンキングの情報を確認し、定期預金を含めて、どの金融機関にどの口座があるかを整理します。
①不動産…登記事項証明書、固定資産税納税通知書の課税明細などを確認
②預貯金…各金融機関の通帳、キャッシュカード、残高証明書などを確認
③株式・投資信託…証券会社から届く取引残高報告書などを確認
④生命保険…保険証券や契約内容のお知らせなどを確認
⑤借入金・保証債務…契約書、返済予定表、残高証明書などを確認
②誰に相続させるかを決める(財産を渡す人を決定)
上記で洗い出した財産をもとに、遺言者本人が「誰に、どの財産を、どの割合で渡したいか」を決めます。
法定相続分と異なる内容を定めることもできますが、一定の相続人には遺留分があります。遺留分を侵害する内容の場合、相続開始後に金銭請求を受ける可能性があるため、家族関係と財産額を踏まえて検討する必要があります。
また、財産を受け取る予定の人が遺言者より先に亡くなった場合に備え、代わりに誰へ承継させるかを定める「予備的遺言」も検討します。
(2)証人を2人以上決定する
公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立会いが必要です。
未成年者、推定相続人、受遺者、推定相続人または受遺者の配偶者・直系血族、公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人などは、証人になることができません。
適切な証人が見つからない場合は、公証役場や遺言作成を依頼する専門家に紹介を相談できることがあります。
(3)公証人と日時を決定する
公証役場へ相談し、必要資料と遺言内容のメモを提出したうえで、公証人と作成日時を調整します。
病気や高齢などにより公証役場へ出向くことが難しい場合は、公証人に自宅・病院・介護施設などへ出張してもらえる場合があります。出張の場合は、通常の手数料のほか、病床執務加算、日当、交通費などが必要になることがあります。
(4)必要書類を収集する
一般的には、次の書類を準備します。案件によって追加書類が必要となるため、事前に利用する公証役場へ確認してください。
ⅰ)遺言者本人の印鑑登録証明書(通常は発行後3か月以内)と実印、または運転免許証・マイナンバーカードなどの顔写真付き公的身分証明書
ⅱ)戸籍謄本・除籍謄本など、遺言者と相続人との続柄が分かる書類
ⅲ)相続人以外の人へ遺贈する場合、その人の住民票など住所が分かる書類。法人へ遺贈する場合は、法人の登記事項証明書または代表者事項証明書
ⅳ)不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、または固定資産税・都市計画税納税通知書の課税明細
ⅴ)預貯金通帳のコピー、有価証券の取引残高報告書など、財産の内容が分かる資料
ⅵ)証人を自分で用意する場合は、証人予定者の氏名・住所・生年月日が分かる資料
(5)遺言の原案を作成する
遺言者の希望と提出資料をもとに、公証人が遺言公正証書の案を作成します。内容を確認し、修正が必要な箇所があれば作成日前に調整します。
原案を検討するときは、財産と受取人を正確に特定するだけでなく、遺言執行者、記載のない財産の承継先、受取人が先に死亡した場合、祭祀承継などについても確認します。
(6)作成当日に内容を確認する
作成当日は、証人2人以上の立会いのもとで、公証人が遺言者本人の意思を確認します。公証人が遺言内容を読み聞かせ、または閲覧させ、遺言者と証人が内容の正確性を確認したうえで、法律で定められた手続を行います。
作成された遺言公正証書の原本は、公証人が保管します。電磁的記録で作成された原本は、日本公証人連合会が運営するシステムに保存されます。
公正証書遺言をお勧めする理由
公正証書遺言をお勧めする主な理由は、公証人が作成に関与するため、形式不備による無効のリスクを抑えられること、原本の紛失・偽造・変造・隠匿を防ぎやすいことです。
また、家庭裁判所での検認が不要なため、相続開始後、預貯金や不動産などの手続に着手しやすいというメリットがあります。
遺言公正証書は検索システムに登録されます。遺言者が亡くなった後、相続人や受遺者などの利害関係人は、必要書類を用意することで、全国の公証役場から遺言公正証書の有無を照会できます。
遺言者の生前は、原則として、遺言者本人以外が遺言公正証書を検索・閲覧したり、内容を証明するものの交付を請求したりすることはできません。
ただし、公正証書遺言を作成すれば、すべての相続トラブルを防げるわけではありません。遺留分、遺言執行者、二次相続、相続税なども含めて検討することが大切です。
関連ページ:遺言の種類|遺言のQ&A|遺言コンサルティングサポート
参考となる公的情報
この記事の執筆者
- ながの司法書士法人 代表社員 降籏桂
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保有資格 司法書士・行政書士・宅地建物取引士(未登録) 専門分野 相続・生前対策 経歴 松本深志高等学校・千葉大学法経学部法学科卒業
大学在学中、行政書士試験合格
大学卒業後、東京の大手司法書士法人に就職し、司法書士補助者として勤務
平成24年司法書士試験合格、平成25年千葉司法書士会にて司法書士登録
地元長野県に戻ることを決意し、平成26年ながの司法書士法人に入社
平成29年松本事務所開設に当たり、従たる事務所代表に就任
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