遺言の種類
遺言とは、遺言者の最終の意思を表したものです。
遺言書を作成することで、自分の財産について、誰に何を相続させるか、法定相続分とは異なる割合で財産を承継させるかなどを決めることができます。
さらに、財産に関する事項以外にも、子の認知、未成年後見人の指定、遺言執行者の指定などを遺言で定めることができます。ただし、遺言に記載すればすべてに法律上の効力が生じるわけではありません。遺言によって法的効果を生じさせることができる事項は、法律で定められています。
この事項を「遺言事項」といいます。なお、家族への感謝や希望など、法律上の効果を直接生じさせない内容は「付言事項」として記載できます。
2026年9月8日現在、遺言は法律で定められた方式に従って作成する必要があり、ビデオや録音だけでは有効な遺言にはなりません。2026年6月には、パソコンなどで作成したデータを法務局に保管する新しい遺言方式を創設する改正法が公布されましたが、現時点ではまだ施行されていません。
遺言の種類は、大きく「普通方式の遺言」と「特別方式の遺言」に分けられます。通常の生前対策で利用されるのは、普通方式の遺言です。
1.普通方式
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
2.特別方式
・死亡危急者の遺言
・伝染病隔離者の遺言
・在船者の遺言
・船舶遭難者の遺言
特別方式の遺言は、死亡の危急が迫っている場合や、隔離・船舶遭難などの事情により普通方式の遺言を作成することが困難な場合に限って認められる例外的な方式です。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者本人が、原則として遺言書の全文・日付・氏名を自筆で書き、押印して作成する遺言です。
用紙に法律上の指定はありませんが、ワープロで作成した本文や代筆された本文は、自筆証書遺言として認められません。ただし、2019年1月13日以降、財産目録については、パソコンで作成したものや預金通帳・登記事項証明書のコピーなどを添付できるようになりました。
自筆で作成しない財産目録を添付する場合は、その各ページに遺言者が署名・押印する必要があります。両面に記載がある場合は、両面への署名・押印が必要です。
自筆証書遺言は手軽に作成できますが、形式の不備、財産の記載漏れ、内容の曖昧さ、紛失・改ざん・隠匿などのリスクがあります。作成後は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することもできます。保管申請の手数料は遺言書1通につき3,900円で、法務局に保管された遺言書は、相続開始後の家庭裁判所による検認が不要です。
公正証書遺言
公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもとで、遺言者の意思に基づき公証人が作成する遺言です。
公証人は、遺言者の意思を確認したうえで遺言内容を公正証書として作成し、その内容を遺言者と証人に読み聞かせ、または閲覧させて、内容が正確であることを確認します。2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化され、原本は原則として電磁的記録で作成・保存される仕組みになりました。
言葉を発することが難しい方や、耳が不自由な方についても、通訳人の通訳や自書など、法律で認められた方法によって公正証書遺言を作成できます。また、病気や高齢などにより公証役場へ出向くことが難しい場合は、公証人に自宅・病院・施設などへ出張してもらえる場合があります。
未成年者、推定相続人、受遺者、推定相続人または受遺者の配偶者・直系血族、公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人などは、証人になることができません。
公正証書遺言は作成に費用がかかり、証人2人以上が必要ですが、形式不備のリスクを抑えられ、原本の紛失や改ざんを防ぎやすく、家庭裁判所の検認も不要です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が遺言書に署名・押印したうえで証書を封じ、証書に使用した印章で封印して作成する遺言です。本文はパソコンや代筆によって作成できますが、遺言者本人の署名が必要です。
封印した証書を公証人1人と証人2人以上の前に提出し、自分の遺言書であることと、筆者の氏名・住所を申述します。公証人が提出日と遺言者の申述を封紙に記載し、遺言者・証人・公証人が所定の手続を行います。
公正証書遺言と同じように公証人が関与しますが、遺言書の内容は密封され、公証人も内容を確認しない点が異なります。そのため、内容や形式に不備が残る可能性があり、遺言書の原本も公証役場では保管されません。
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、作成時点で内容を他人に知られずに作成できますが、本人の死後、原則として家庭裁判所で検認の手続が必要です。
ただし、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言は、検認が不要です。したがって、検認が不要なのは、公正証書遺言と法務局に保管された自筆証書遺言です。
死亡危急者の遺言
死亡危急者の遺言とは、病気その他の理由で死亡の危急が迫っている人が、証人3人以上の立会いのもとで、証人の1人に遺言内容を伝え、その証人が筆記することなどによって作成する特別方式の遺言です。
筆記した証人は、その内容を遺言者と他の証人に読み聞かせ、または閲覧させ、各証人が筆記の正確性を確認したうえで所定の手続を行います。証人には、普通方式の遺言と同様に欠格事由があります。
また、遺言の日から20日以内に、証人の1人または利害関係人が家庭裁判所へ確認を請求しなければ、遺言の効力は生じません。あくまで緊急時の例外的な方式であるため、可能であれば、本人の意思能力と体調が安定している段階で普通方式の遺言を作成することが望ましいでしょう。
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
| 公正証書遺言 | 自筆証書遺言 | |
| メリット | ○家庭裁判所での検認手続が不要 ○相続開始後、遺言内容を実行する手続に着手しやすい ○原本の紛失・改ざん・隠匿のおそれが少ない ○公証人が関与するため、形式不備のリスクを抑えられる |
○手軽で、いつでも作成できる ○自分で作成すれば公証人手数料がかからない ○証人が不要 ○法務局の保管制度を利用できる |
| デメリット | ●公証人手数料などの費用がかかる ●証人2人以上が必要 ※次のような方は証人になれません。 ・未成年者 ・推定相続人、受遺者 ・推定相続人または受遺者の配偶者・直系血族など |
●内容が不明確になりやすい ●形式の不備で無効になるおそれがある ●自宅保管では、紛失・偽造・変造・隠匿のおそれがある ●原則として家庭裁判所での検認手続が必要 ※法務局の保管制度を利用した場合は検認不要 |
どの方式を選べばよいですか?
費用を抑えて自分で作成したい場合は、自筆証書遺言が選択肢になります。ただし、形式不備や紛失を防ぐため、専門家による内容確認や法務局の保管制度の利用を検討しましょう。
不動産が複数ある、相続人以外へ財産を渡したい、家族関係が複雑である、相続開始後の手続を円滑にしたいといった場合は、公正証書遺言が適していることが多いです。
どの方式で作成する場合も、推定相続人と財産を正確に確認し、遺留分、遺言執行者、受取人が先に亡くなった場合の定めなどを検討することが重要です。
関連ページ:公正証書遺言の作成手順|遺言のQ&A|遺言コンサルティングサポート
参考となる公的情報
この記事の執筆者
- ながの司法書士法人 代表社員 降籏桂
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保有資格 司法書士・行政書士・宅地建物取引士(未登録) 専門分野 相続・生前対策 経歴 松本深志高等学校・千葉大学法経学部法学科卒業
大学在学中、行政書士試験合格
大学卒業後、東京の大手司法書士法人に就職し、司法書士補助者として勤務
平成24年司法書士試験合格、平成25年千葉司法書士会にて司法書士登録
地元長野県に戻ることを決意し、平成26年ながの司法書士法人に入社
平成29年松本事務所開設に当たり、従たる事務所代表に就任
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